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【漫画レビュー】『ファーストテイク』──静かに始まる、あまずっぱい夜の物語
公開日:2025年5月26日|ジャンル:学生・ラブコメ・R18
作品概要
『ファーストテイク』は、リイド社発行のアダルト漫画誌「comicクリベロン DUMA」第72号に収録された、u2先生による短編作品です。
全24ページながら、その濃密な心理描写と繊細なキャラクターのやり取りで、多くの読者の心を掴んで離しません。
主人公は、大学に入学したばかりの女子学生・笹原文音。友達にも恵まれ、日々は平穏に過ぎていきますが、恋愛にはまだ一歩踏み出せずにいました。そんなある日、サークルの飲み会で酔い潰れた男友達・高野先輩を彼女が自宅まで送ることに。夜が深まるなか、ふたりの間には思いがけない会話が生まれます。
“童貞”というリアリズム
酔った高野先輩は、ついに自らが童貞であることを打ち明けます。普段は明るくて頼りがいのあるように見える彼の、意外な一面に戸惑いながらも、文音は彼の本音にどこか引き込まれていきます。「誰かに筆下ろししてもらいたい」──そんな不器用な告白は、場違いにも思えながら、妙に真っ直ぐで、読み手にも刺さる言葉です。
ただの“性”の描写ではなく、人の心が揺れる瞬間を丁寧に描き出すのがu2先生の持ち味。静かに、しかし確かに変化していく2人の距離感が、ページをめくるごとに伝わってきます。
表情で語るラブコメの妙
この作品の大きな魅力は、登場人物の「表情」にあります。
照れ、ためらい、戸惑い、そして覚悟——セリフに頼らず、キャラクターの目の動きや口元の微妙な変化で語る場面は、読み手に強い印象を残します。
特に、文音が自分の気持ちに気づき始めるシーンの演出は絶妙。ラブコメとしての甘さに加え、思春期特有の揺れ動く感情がリアルに描かれています。
また、性的な描写においても、単なる刺激に終わらせないバランス感覚が光ります。決して過剰すぎず、感情の流れに沿った展開で、読者の心にしっかりと物語を残していきます。
読者の共感を集めたポイント
- 「インキャ」「童貞」といった属性に対する肯定的な視線
- 三白眼や恥じらいといったフェチ的要素をさりげなく盛り込んだキャラデザイン
- 会話の間や仕草など、非言語的な演出が抜群に巧い
- 後味のよい読後感と、“続きを想像したくなる”余韻
「初体験」というテーマを扱いながらも、それを単なる通過儀礼ではなく、「心と体が初めて通じ合う瞬間」として描いたこの作品。読者からは、「思っていたよりも丁寧なつくりで驚いた」「キャラが可愛くて感情移入できた」などの声が寄せられています。
基本情報
タイトル | ファーストテイク |
---|---|
著者 | u2 |
出版社 | リイド社 |
収録雑誌 | comicクリベロン DUMA Vol.72 |
ジャンル | 学生、ラブコメ、初体験、ラブラブ、童貞、処女 |
ページ数 | 24ページ |
発行日 | 2025年5月1日 |
年齢指定 | 18歳以上(R18) |
まとめ
『ファーストテイク』は、ただのエロ漫画とは一線を画す作品です。恋愛経験が少ない人間同士が、たまたま一晩を共にしたことで、お互いの「弱さ」や「期待」に正直になっていく──そんなシンプルだけど切実なドラマがここにはあります。
初めて誰かと触れ合う瞬間を、やさしさとリアルさをもって描いた本作。少し照れくさく、でもどこか懐かしさを覚える、そんな一冊です。
※本記事は編集部による独自の視点で執筆しています。
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